住民を忘れた核燃基地探し 『朝日新聞』 12月27日 声 朝日新聞社 <1984年(昭59)>
 住民を忘れた核燃基地探し 「朝日新聞」 12月27日 声 朝日新聞社

 昨年、九電力首脳(電気事業連合会)が核燃料サイクル施設の立地にあたり、青森県下北半島・六ヶ所村の“むつ小川原巨大開発”用地の広大な原野を見て「日本にまだこんな地が残っていたとは……」と言ったという。建設方針決定後の今になって、米軍や自衛隊機が飛び交う三沢対地射爆場」の危険空域下ということで防衛庁との調節にはいるとは解せない。
 映画「「海盗りー下北半島浜関根」で売られた下北の海岸線を撮るのに、セスナ機のパイロットは撮影許可に苦しんだ。やっと土曜日午後と日曜日、基地から七キロ以遠での条件でゆるされた。いわば六ヶ所村は射爆訓練下のむらなのだ。
 誤爆・墜落事故は百数十回、とくに昨年十一月には「発射ボタンを押さなかった」のに模擬ロケット弾(対潜水艦用)が市柳沼方向に誤射された。その延長線上に巨大な国家石油備蓄基地が油を入れ始めていた。
 そもそも電事連が本心欲しいのは、15キロ北方の東通り村原発予定地(東電・東北電)ではないのか。この9月、現地漁協が72億円の漁業補償で交渉を迫られている新“適地”だ。だが、問題はこのむらむらに二万余の住民が住んでいることをすっぽり忘れていることだ。