心に響いた言葉 『アフガン映画ニュース』 第4号 8月20日号 日本アフガニスタン合作記録映画を実現させる会 <1988年(昭63)>
 心に響いた言葉 「アフガン映画ニュース」 第4号 8月20日号 日本アフガニスタン合作記録映画を実現させる会

 アフガニスタンは確かに何かを産みだそうとしている。十年間政権を掌握してきた人民民主党は、過去に大きな誤りを犯したことを隠さずに人々に告げようとしている。その相手は反政府勢力であり、イスラム教徒であり、九五%の普通のアフガンの大衆に向けてであろう。今回アフガニスタンでナジブラ大統領から一公務員までさまざまな声を聞いた。
 ダリ語は解しない。だから相手の眼をみつめて受け取った声は次のように解いた。誰の言葉でもない。心に響いたいくつもの言葉を蒸溜すると歌に似た節回しになる。
 「兄弟たちよ、この声を聞きとってほしい。無益な殺し合いをやめ、この兄弟あい喰む争いに終止符を打つためなら、われわれはいかなる話し合いにも応じよう、いかなる知恵も働かせ、いかなる困難にも耐えよう。ただし、では本心、王政に戻ればよいと思うのか、あるいは、本心イラン型のイスラム国家にしたいのか。国民の気持ちをあなた方も掴んでいよう。いまこそ「これがアフガニスタンだ」といえる国を作らねばならないことは、反政府勢力、反政府ゲリラの指導者の諸氏も深く思い巡らしていることではないのか。いまのアフガンにピッッタリしたお手本も真似るべき雛形もない。地球上の何処にもないからこそ苦しまねばならない……そのことを、あい闘った反政府勢力諸氏もよく知っているはずだ。ならば、ここから出発して新しい国を創造しようではないか。それはいかに想像力の要る前途遼遠な事業であろうとも、ヤルッキャナイ!この荒れ果てた土地、この現実を直視して、そこから新しい平和なアフガニスタンを造り上げよう。それしかない。これ以上の同胞の流血を回避するのに、国民和解以外に、いかなる選択が残されているのだろうか。誤りの償いをさせてほしい。われわれにその誤りの責任を持たせてほしい。人民民主党はエゴを洗い、もっと献身的な活動家を育て、あなた方に服務することを誓おう」-私にはこう聞けた。
 四十日間のカープル滞在中、反政府ゲリラの正面攻撃はなく、テロのほかは平穏だった。ある公安警備の知人は「……しかし殺傷力の比較的弱い弾頭のロケットを使っている」と言う。「スティンガー・ミサイルを決してインド航空やアフガンのアリアナ航空には向けない……」とも聞いた。人々の不戦の心情を無視できないものが流れはじめ、さらに、それを嗅ぎとる人々がいる。心をこめたメッセージの持つ呪縛の力が、この世にあると信じたい。アフガンの人々がこれから何を産みだそうとするか。ただし、映画はひたすらその普通の人々を描くつもりだ。