アフガニスタン第二段階のための学習会レジメ ノート <1988年(昭63)>
1)「何故いまアフガンか?」 問題設定の趣旨…スタッフのなかでの経過として、/「アフガン問題」をテーマとすること自体、ソ連とアフガンとの関係をどうとらえるかを抜きにしては考えられない。その場合、ソ連の対アフガン政策を積極的に評価する立場に立つのか否か」(山方さんの土本、高岩のこの姿勢に対する不信感の表明、『親ソ派』なら「違う!」)/今のマスコミの一般的観測「ソ連はナジブラ政権を見離した…だから1年とは持つまい」その政権の「息のかかった」映画であればナンセンス、マンガチックではないか。/民衆や歴史的遺産を「重点的に」撮るといっても、いまのアクチュアルな現実とのからみを「抜き」にするのか、そうでないとしたらどんな「立場性」どんな「視点」から纏めるのか。/いま、世界、日本とアフガニスタン問題との接点、主要な関心事は何か……。
 今、スタッフは良く言えば一定の注目、関心を呼んでいる。悪く言えばマスコミ全体の指向性とは、まったく逆なアプローチであるだけに、辛辣なまなざしに包囲されている。そこが力学的だ。

2)「いまアフガンで起きつつある事」 これを*いかに調べるか *どう考えるか *どう想定していくか。
 今回はテキストとしてアフガン政府サイドの資料、記録を徹底的に分析してみたい。この資料の持つ、具体性と、数字などの資料性、そして公表された内部告発、自己批判、方向性(国民和解政策、民主主義)人々の生活についてのデータなどを自由討論の基礎にしたい。

 1)にあげた諸問題はすでにマスコミから受け取っている。それにたいする現実把握を立体的にしたい。

3)「映画として、なにをとるか。いかに準備するか」(別紙『第2段階 撮影項目案、参照)
 まずロケハン(あるいは先発)としての行動開始にあったての討論の項目として……(野口寿一氏の8月上旬のアフガン・フィルムとの討論の再検討をしてから。しかしそれにとらわれずに)   
 *テーマについて
 *映画の骨格、文体(美学)、アクチュアリティについて
 *第2段階での最重点的取材対象について
 *そのスタッフ態勢、製作態勢、現場ロケーション態勢について
 *来年以降のこの映画の歩き方についてのイメージについて

4)自由討論の時間。さらにつぎの会合について
 以上       

 『眠れる泉<カレーズ>の復活』…第2段階・撮影項目(案) アフガン・フィルムとの打ち合わせ用  88,9,1


(1)国民和解運動の現場の記録

 郡、できれば村単位の国民和解委員会の活動のディテール。たとえば反政府勢力のもとにあった地区における和解政策の現状。地区の自治体議会の選出と運営、その首長がもと反政府ゲリラ
 反政府勢力の指導者であったようなケースがのぞましい(理由…「国家レベルの「連合」政権はこうした行政末端の民衆の連合への意志の積み重ねで達成したい」とする国民和解政策のイメージを一つの郡、一つの村の実践記録でたどりたいから)
   
 *その地域の集落、住民の日常生活と仕事。政府への要望は何か?、緊急の問題はなにか?。
 *その反政府勢力側だった首長へのインタビュー。(国民和解以前の住民の生活と以後の変化)
 *武器を置いて、国民和解委員会に参加した反政府ゲリラのリーダーや兵士へのインタビュー、
 *まだ武器を捨てない特定グループへのアプローチ。その対策についての委員会の会議風景。代表的委員へのインタビュー。相手グループとの接触、話し合いの現場の記録(何回目かの話し合いの機会をとらえることが現実的か)
 *その地域の難民帰還者の受け入れ、仕事(土地または就職)、子供の教育など生活の定着を。     
 *(関連インタビュー…カブールにて)
 四月革命直後、アミンらにより投獄体験を持つ、現在人民民主党活動家の回想とインタビュー。

(2)農村の記録…『眠れる泉<カレーズ>の復活』に着手しようとしている特定の集落。(チャラシャープ村に限定しない) (理由…農村への四月革命の功罪はかなり克明に分析されている。しかしどうしていくかはまだ明快ではない。その試行錯誤もふくめて一農村の再生の動きを、涸れた涸れの復活作業を軸にして描きたい)

 *大地と水を基軸に営まれている、「普通の村、普通の人々、普通のアフガン人」の一日。そのリズム。日常の食生活、飲み水、燃料あつめ、生活品の売り買い。(結婚式、お弔い、出産などに立ち会えれば幸い…長期取材の必要とその成果を集約したい。
 *「アフガンには太陽と水がある!」という。ただしその水は伝統的な方法で取得されてきた。その「土地と水の関係」から人間関係をとらえる。地主、水地主(MIRHOU BASHI・ミラーボーシ)からかっての貧農、小作人までの階級階層を見る。イスラム聖職者の役割も押さえる。
 *「土地改革は一律1ヘクタール、上限6ヘクタールだった…。それが変わった。何故?」この路線変更を農民はどう受け止めているか。以前の路線はどんな混乱と「農業を反政府勢力に追いやることになった」経過を生んだか。
 *カレーズは何故死んだか、その痛手はいかばかりか。農地の荒廃、協同組合化農業の問題点。つまり、この村ではどんな農業の再生が夢見られているか。
 *四月革命でかわったもの(医療、教育、女性の立場など生活のディテール)そしてかわらなかったもの(家庭、階層、伝統、イスラム、文化の価値観)。大カッコとして「内戦」の爪跡。(インタビューや会話の収録で)
 *難民の帰還にどう対処しようと、この集落の末端の「国民和解委員会」は活動しているか。それとカレーズの修復との係わり、希望要因としての「水」の復活。生活と労働の協同性の在り方を見たい。
 *以上の総まとめとしてのカレーズの修復シーン。

(3)「カブール・カブール・そしてカブール」

 女性による、女性の眼でみた、カブールの女性(古いもの新しいもの、否定面、肯定面もフランクに)アフガンの都会派女性キャラクターとコンビで描くシネ・エッセイ風に。

 *知り合った仲間同士の感覚で、イスラム社会としてはユニークなカブールの一面、アフガン女性の新しさが親しめたらいい。

(4)ジャララバ-ド再訪。
 平和な収穫の秋…されど戦いは…

 *さきに取材してから数ヵ月後、ソ連軍撤退から半年、国境、パシュトゥーン族の街はどうか。国境警備の政府軍指揮官、兵士のインタビュー。取材の許される作戦に同行、国民和解政策と治安維持のバランスの苦心、彼等のみる国民和解の展望と予想される曲折を聞きたい。
 *最も忙しいオリーブ工場とオリーブ農園。ここでの女性労働者。農産物の加工をつうじて、この豊かな水のもつ恩恵を生かした農業の工業化の試みとして描く。収穫祭があれば……。

(5)アフガニスタンの遺跡と歴史的遺産の現状。人類的な文物はいかにまもられたか、否か。

 *各地の遺跡について。バーミヤンの摩崖佛、ガズニーの仏跡とイスラム、ヘラートのイスラム建築、マザーシャリフのモスク、シバルガンの遺宝の出土箇所、カピシ様式の仏跡、古都・カンダハルのたたずまい等。
 *カブール博物館の文物、およびシバルガン黄金遺宝等。


(6)その他。この中に四月革命直後を記録したアフガン・フィルムのドキュメンタリーの複写も含む。
 以上