もうひとつのアフガニスタン 「在りし日のカーブル博物館-1988」 解説 ノート <2003年(平15)>
(A)資料映像『もうひとつのアフガニスタン-カーブル日記・1985年』…知られざる『アフガニスタン民主共和国』の人びと…
(私家版ビデオ・42分、2003年、製作・映画同人シネ・アソシエ) 
<内容>内戦下のカーブルの市民生活-バザール、モスク、ユネスコに顕彰された識字運動、婦人の学習、英語塾など。近郊農村の生活と自衛風景。そして戦争孤児たちの生活。新しい祝日-革命記念日の20万市民の素顔などを映している。西側世界では唯一の『民主共和国』時代の記録である。

<解説>映画『よみがえれカレーズ』(90年)での共同監督アブドゥル・ラティーフは「この民主共和国の10年は近代アフガニスタンで一番人間らしい時代だ」と述懐していた。
 アフガニスタンは世界の最貧国といわれ、その文盲率は男女平均90%という国だった。かつてはシルクロードの十字路として交易で栄え、紀元前からギリシャ、インド、中国など東西文明を受け容れ、いくつものオアシス国家を建設した。だが永く中世的なイスラム王政のもとに眠ってかの如くだった。その国を20世紀後半、中国革命、アラブ民族革命が揺さぶり、この国にも革命が胎動した。その特色をラティーフ監督は「われわれは中世から資本主義を経ないで、民主的で社会主義的な国に向う実験をしている」といった。

 1973年、王政を倒し共和制へ、そして 5年後、「民主」共和制へ。その報道には「立ち上がった軍の戦車の砲口、兵士の銃に花が差されている」とあった。「武器に花束…」、なんという優雅な武器の飾り立て方であろうか。それが私の関心をアフガンに引きつけた。
 だが、その“実験的”革命はジグザグした。反乱“ゲリラ”、ソ連軍の進攻。そのソ連への非難はそのまま新「民主共和国」にも向けられ、日本は欧米や西側とともに“かいらい政権”として、ほぼ国交を断った。その後アフガニスタンの印象は絶望的な泥沼の内戦…そしてアフガニスタン人は殺伐な戦士像か難民像でしかなかった。そのなか、私たちは国内に生活する「あるがままの民衆像」を求めて、85年、首都カーブルを訪れた。このフィルムには、人間らしい人びと、特に女性や建設的な青年たちの、当時、見た事もない類いの顔々々があった。
 <この作品は未使用ネガから復元し、将来のアフガニスタンの資料映像となるようにビデオ化したものである>

(企画・演出・語り)土本典昭。(撮影)高岩仁、一之瀬正史。(整音)久保田幸雄。(音楽)高田みどり。(編集)土本基子、馬場朋子。(協力)山上徹二郎ほか。(デザイン)安斎徹雄。(資料提供)アフガン・フィルム。

<頒価> 個人,NPO…5,000円。教育機関・図書館など…10,000円(ともに送料別)

<申し込み先> 『シネ・アソシエ』 東京都杉並区永福2-19-17/03-3321-8678 E-mail doro@carrot,ocn,jp
<配給協力> 『シグロ』 03-5343-3102/5343-3102 E-mail siglo@cine,co,jp 『ビデオ・プレス』 03-3530-8588 ・ 03-3530-8578
<FAXによる注文記入欄>

(B)資料映像『在りし日のカーブル博物館-1988年』-アフガニスタンの歴史と未来をつなぐために-
(私家版ビデオ・42分、2003年、製作・映画同人シネ・アソシエ)
<内容>アフガニスタンの貌(かお)といわれたカーブル博物館がは1993年に破壊された。カメラは88年当時の無傷の博物館の代表的文化財を撮影していた。…ギリシャ・ローマなど紀元前のヘレニズム文明の遺産、その神話の神々の像のへの憧憬と刺激から生まれたといわれる仏教彫刻…ガンダーラ、バーミアン、ショトラック美術など。92年アフガニスタン民主共和国の崩壊以後、その七割が破壊され、略奪され、日本はじめ海外に流出した。、その返還運動も紹介している。カーブル博物館のフィルム記録は他にはない。

<解説> アフガニスタンの東西文明の十字路としての歴史は、二十世紀に発掘されたシルクロードからの出土品で一躍、世界の耳目を引きつけた。紀元前のギリシャ・ローマの地中海文明が若いアレキサンダー大王によって、中央アジアにもたらされていたことは、フランスはじめ西欧の考古学者たちを発掘に駆り立て、また、正倉院の宝物や仏像の淵源が中国、西域をはるか溯ってアフガニスタンの地にあったとして、日本の考古学者を振るい立たせ、アフガニスタンは20世紀の世界史研究の最も新しい対象の地に目された。
 不思議とも言えるが、かつて栄えたエジプトのガラス工芸もインドの象牙彫刻も戦乱や多湿な風土で腐蝕させたか、原産地では発見されていない。アフガニスタンの乾燥台地と土レンガの建築素材が幸いしたといわれる。それらはカーブル博物館にのみあるのだ。

 なぜ、アフガニスタンの歴史的遺産が破壊されたか。アフガニスタンの歴史教科書にはマホメッド(七世紀)以前は記述されていない、つまり異教徒時代の歴史は教わっていないという。タリバンによるバーミアンの大仏の爆破は偶像破壊の象徴的な出来事である。
 彼等は「世界は大仏の破壊には騒ぐが、アフガン民衆の飢えには無関心だ」という。それは事実だ。だがそれを咎める事は誰に出来るか。西欧・日本の発掘も近々この数十年のこと、カーブル博物館などの価値はアフガン民衆にはまだなじみがなかったと言えるのだ。
 アフガニスタンの歴史は『在りし日のカーブル博物館』の学習から始まるかも知れない。カーブル博物館の代表作の写真は残されているが、映画としてはこれが最初にして最後になった。(このビデオは『よみがえれカレーズ』の未使用ネガから作成した)
       
 (企画・演出・語り)土本典昭。(撮影)高岩仁、一之瀬正史。(照明)外山透。(整  音)久保田幸雄。(音楽)高田みどり。(編集)土本基子、馬場朋子。(協力)山上徹二郎ほか。(デザイン)安斎徹雄。

<頒価> 個人NPO… 5,000円。教育機関・図書館など…10,000円(ともに送料別)

<申し込み先> 「シネ・アソシエ」 東京都杉並区永福2-19-17/03-3321-8678 E-mail doro@carrot,ocn,jp
<配給協力> シグロ 03-5343-3102/5343-3102 E-mail siglo@cine,co,jp ビデオ・プレス ・ 03-3530-8588/03-3530-8578
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