啓示に満ちた白神山地
この映画は意表を衝いている。世界遺産の白神山地の山麓の斜陽と思われた、いわば無名の町を見つめ、白神山地とその住民の“夢”にチャレンジした作品だ。さらに、映画記録の仕事が町民に、町民が映画にと相互に影響を与え合った様が画面に滲んでいる。地元の人と“よそもの”が携えて、その地の自然、歴史への興味を追及していった結果であろう。
地元学童たちのロケ期間のなかでの変貌には驚く。例えば“ミジンコの世界”を自作ビデオで発表する音楽家坂田明の話に魅せられ、寒冷の白神山地にのみ生きる酵母菌の存在理由にまで一気の納得していく実習などや、こうした実地教育を受けたかれらの卒業式の胸を張った姿勢と相貌は感動的ですらあった。
この映画はいわば客観的な実写ではく、二年間の“未来探求の過程”の記録である。世界中の“過疎地”での広い公開を望みたい。