ただ一人の思想家 佐藤忠男さん ノート <2007年(平19)>
 ただ一人の思想家 佐藤忠男さん ノート

 佐藤さんは、日本の映画批評界でただ一人の思想家だと思っています。どういう時代の中でどんな人から作品がうまれてきたか、バックグラウンドをよくつかんでいるから、批評に厚みがあり、人の認識をかえるだけの力をもっている。だれもまねせずに出発し、世の中で騒がれない映画も隔てなくとり上げてきた。僕の作品も水俣病に取り組む前から見て、僕が自信を持っていいところをずばりとほめてくれ、間違っていけないところは、それとわかる形で指摘してくれた。すぐれた批評家は作家を前に出す、という言葉が当てはまる人です。個人的な付き合いはないけれど。少年期に戦争に頭を占領され、終戦後に、だました大人に対して煮えくり返る思いをしたという出発点が同じだから、考えに共通する点があるんですね。彼が映画の魅力を語るとき初々しさもいい。年をとっても権威にふんぞり返ることなく、ナイーブさを失わないのはすばらしいと思います。